本堂脇に咲く「福聚桜」が、新しく園芸品種として登録されました
呑山観音寺の本堂脇、並びに阿弥陀堂の脇にある桜の古木は、その美しさと場所から春には多くの人を楽しませています。
桜の品種はもとより、鳥が運んで自生したものか、誰かが奉納したものかも不明でした。
八重の山桜と伝わっていたこの桜は寺内で「福聚の桜」という名前で呼び、大切にされてきました。
令和元年、桜の保存や保全活動を行う公益財団法人「日本花の会」の「園芸品種認定制度」を通し、この桜の品種鑑定をお願いいたしました。
調査の結果、どの品種にも該当しなかったことから、令和2年9月に、篠栗町から「福聚桜(ふくじゅざくら)」の名前で園芸品種の申請を行いました。
令和3年3月31日、日本花の会結城農場から田中秀明農場長が来山。
篠栗町長、町役場・観光協会関係者の立会いのもと、桜の花の最終調査が行われました。
そして、令和3年7月21日に、園芸品種として品種登録されました。
令和3年3月31日の花の調査の様子
福聚桜の特徴
日本花の会「福聚桜」調査報告書より抜粋
(認定番号 第033号)
'福聚桜(フクジュザクラ)' Cerasus 'Fukujuzakura'
2021年7月21日認定 申請者 篠栗町
この桜は福岡県糟屋郡篠栗町萩尾にある呑山観音寺で古くから栽培されており、原木は境内の本堂と阿弥陀堂の隣にあります。
2020年6月時点、樹高は約13m、地表より約1.1m付近で二幹に分岐しており、地表より1.2mでの幹周は131cmと86cm。
樹齢は100年生前後と推定され、過去には台風で太枝が折れる被害もありましたが、今はとても旺盛に成育しています。
葉は無毛で成葉裏面がやや白色をおびること、葉縁鋸歯の先端が芒形であること、花各部は無毛であることなどの形態的な特徴からオオシマザクラとヤマザクラの雑種と推定されます。
類似品種の'金龍桜'(原木所在地:三重県桑名市東方 照源寺)と比較・検討した結果、がく筒の形、がく裂片の形および鋸歯の有無などが異なることから別品種と判断しました。
花弁数が6~11個に増加した小花が一樹中に混在すること、花は大輪で花弁が重なりボリューム感があること、白い花弁と赤茶色の新芽の組み合わせが美しいなど、観賞性にも優れた個体です。
なお、品種名の福聚とは、「福が集まる様」、「福は善のことで善行が集まっていること」、「幸せをもたらす多くの功徳」などを意味する仏教用語で、呑山観音寺が命名しました。
認定品種の特性詳細
落葉性の高木で樹形は傘状、樹幹の色は灰褐色で光沢は弱い。
皮目の並び方は横並びで、気根はない。枝の太さは中、色は灰褐色で新梢に毛はない。
葉全体の形は楕円形、先端は尾状鋭尖形、基部はくさび形、葉縁鋸歯は単鋸歯に二重鋸歯が混ざる。
先端は芒形で腺はない。葉の長さは10~15cm、幅は5~8cmで厚さは中。
成葉表面の色は濃緑色、裏面はやや白色を帯び、両面とも無毛、側脈数は8~11、葉柄の長さは約2.6cmで無毛。
成葉の蜜腺は葉柄上部にある。
花序は散形または散房状で一花序に3~4花、花の向きは横向き、一重八重咲で開き方は平開形となる。
花の大きさは直径3.8~4.4cmの大輪、蕾の色は淡紅色、開葯時の色は白色。
花弁全体の形は円形または扁円形、先端の切れ込みは少、基部の形は鈍形、花弁表面のしわは少、花弁の脈は目立たない。
花弁の長さは約1.8cm、幅は約2.1cm、花弁の厚さは中、花弁数は5~7個で、ときに1~2個の旗弁が有る。
雌ずいの長さは約1.6cm、雌雄ずいの長さの比は雌ずいが雄ずいより長く、数は1本、葉化はなく、花柱は無毛。
雄ずいの長さは約0.7cm、数は42~48本、がく筒の形は長鐘形で無毛、がく裂片は長卵状三角形で鋸歯はなく、無毛、色は紅緑色
。
花柄の長さは約2㎝、小花柄は約2cmで無毛。苞全体の形は広倒卵形、鋸歯は芒形。
花の香りは少し有り、展葉期と開花期は同時、通常開花期は4月中旬、'染井吉野'より約1週間後に開花する
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